挑戦よりも、みんなの安心を根底に置く

若い内はまだまだスキルや経験が伴っていないことも多いので、新しいことを学びながら経験を積んでいくことで、自分の価値を高めていくことができる。私も32歳で独立してからは、我武者羅に勉強や仕事に取り組んで、自分のスキルや経験を高め続けてきた。

40歳を目前に控える現状にあっても、補助金を獲得して、自社製品を作ってみたりと、まだまだ新しいことに挑戦を続けているけれど、挑戦を続けるという事は失敗のリスクを孕んでいるという事の裏返しでもある。新しい経験を積むためには、それ相応のリスクを許容する必要があるということだ。それらリスクを取り続けることで得られることもあるかもしれないけれど、リスクを取り続ける人、言い換えれば挑戦をし続ける人というのは周囲からすると少し心配に移ることも多いのではないかと思う。

お客様の立場に立って「挑戦」を捉え直す

「経営上のリスクを取り、乗り越えていかなければいけない」というのは一般論として正しい。世の中は日々変化し続けていくため、それら変化に適応するためにリスクを受容しながら、それらを乗り越えていくという事をしなければならない。

だけど、経営上のリスクを取り続けている限り、その対価としての負担が存在する。その負担はお客様にとっての不安要素にしかならないのではないかと最近感じるようになってきた。だから、挑戦することは、お客様にとっての価値でもなんでもなくて、お客様にとってもリスクに繋がってしまう。

お客様への提供価値を高める上で必要ないリスクは取らない方が良い。挑戦はしても良いが、最低限に収めておく必要がある。不必要な挑戦を避け、目前のお客様への提供価値最大化を常に考えながら日常に取り組むことができれば、お客様にとっての「安心」につなげられるのではないかと思う。目前の仕事に集中ができる体制を整えることが大事だ。

投資せず、お金を守り資金を貯蓄する

これまで、稼ぎが増えて資金的に余裕ができたら、その余裕資金を投資して更に売上を増やすために何ができるかを考え続けて、実際に積極的に集客への投資を続けてきた。多くの集客支援サービスを実際に使ってみたけれど、あまり成果は出ていない。集客支援サービスに消えていった資金は数百から数千万円を数えると思う。

お金に対しては「守る」という意識が必要だ。資金的な余裕ができたら、更に増やすためにベットしていくのではなくて、貯蓄として横によけておくことが必要だ。その小さな積み重ねでしか資金的な余力を作り出すことは難しい。投資はせずに、黙々と資金を残す努力をすることが大事だ。

新しい挑戦をせず、経験ある領域に集中する

私はもうすぐ40歳だけど、30代半ばの頃は様々な仕事に手を出してみたくて仕方がなかった。だけど、当然の結果だけれども、新しいことを初めても成果を出すことはできない。十分に経験を積んできたシステム開発やWebサイト制作の仕事でなければ、利益を出すことはできなかった。

今自分が得意とする領域で稼げる限界の金額を考え、その金額で予算を組み、その予算を守ることを毎年やっていくことが大切だ。予算以上の売上が稼ぎ出せればラッキー。予算未達の場合も動ぜずに黙々と安定的に仕事をすることが大事だ。十分に経験のある領域で稼げる金額を確実に手に入れながら、安定的な売上を確保することが大事だ。

人間関係と会社は最小に保つ

会社を小さく保つことで、年間に必要な売上金額を小さく保つことができる。人を雇うということは、その人件費以上の売上が必要になり、その売上を得るための集客が必要になる。意図的な集客は多くの場合にうまくいかない。それよりかは、会社のユニットサイズを小さく保つことで必要売上を減らすことが重要だ。

会社を小さく保つことにより、関係を持つ人との関係性も少なくなるのでコミュニケーション時間が少なくて済むようになる。コミュニケーション時間が少なくなれば、その分他のことに思考時間を割けるようになるので、売上向上やプライベートに時間を割くことができるようになる。趣味の時間として仕事をするのでなければ、仕事は仕事と割り切り、必要以上の時間を投入しないことが大事。その時間を使って効率的に何ができるかを考えたほうが良い。

また、三重や近隣地方のシステム会社の様子をうかがっていると、どの会社もほとんどが役員数名にフリーランスや若手数名という体制がほとんどだ。規模を拡大できている会社と言えば、大手企業や自治体、行政等とのパイプがしっかりしていて、継続的な売上を確立できる場合を除くと基本的には役員オンリーの規模を脱却することはできない。規模を拡大しようとするのは、仕事量が確保でき、実際に仕事量が増えすぎてからでも遅くはない。

挑戦せず、安定することで得られること

地方は人口が少ない。特に今後は少子高齢化が加速していくので、よりその傾向は強まっていくことが予想されている。この流れは誰にも止められない。だからこそ、挑戦をしないことが大事。

会社を小さく保ちながら、挑戦をせずに、上記に書いてきた安定的な仕事を黙々とこなしていくことで手に入れられることもある。それは、家族の生活の安寧であり、安定的なお客様への提案活動の時間を、自分自身余裕を持った安心の時間の中で実施し続けていくことができる。

私はこの5年間、地方において、IT企業の組織拡大を図ろうとすることで、これらの失敗を積み重ね続けてきた。だから、今後はこれ以上の挑戦はしないし、会社のサイズも大きくしない。私は、家族や従業員、お客様の生活の安寧を最優先に考え、今後は取り組んでいこうと思う。

最後になるが「挑戦しないことが大事」と書いている私自身、独立後のこの8年間は相当な量の挑戦を積み重ねてきた自負がある。だからこそ、挑戦をしないという選択肢を選ぶ自分自身が今ここにある。デザイン思考のように拡大したら収縮しないといけないので、今はその収縮の時期なのだと思う。研ぎ澄ましていくことが重要だと思うよ。