管理者経験を経て、技術者として再出発を

独立後は当然1人だったわけだし、ウェブサイトのコーディングの仕事を地道に受注しながら生計を立てていた。2017年7月に独立して以来、2017年度は半年間で300万円を売り上げた。2018年度は1年間で600万円を売り上げた。2019年にはモノづくり補助金の案件も受注することができたので、売上高は1400万円まで膨らんだ。そのくらいの時期から仕事量が多すぎて1人では回らなくなってきていたので、採用の募集を出してみた結果、そのタイミングで応募に乗ってきたのが松本君だった。

松本君と過ごした2年間の末に

松本君は最初の内はコーディングの仕事を手伝ってもらう程度だったのだが、翌年に入る頃には、自社の開発案件の最前線でプログラミングを行う主戦力として振舞うようになっていたと思う。モノづくり補助金案件、ロボットプログラミングスクールの予約システム開発案件、自動車整備工場向けの業務管理システム開発案件、自動車ディーラー向けの車両登録システム案件、保険代理店向けの保険料・税金計算帳票システム案件、大学向けの保育園業務記録システム案件と、これだけの案件を終えたのち、彼は遠くへ去っていった。

上流SEや営業を経験したこと

その間、私の働き方のスタイルは大きく変貌を遂げていた。松本君が入社してすぐのころから約1年間に至っては、一緒にコードを書きながら徹夜をする毎日を過ごしていた。そんな中、1年が経った2020年8月に新たにメンバーに加わったのは、今も一緒に仕事をしている松井さんだ。松本君と松井さんの2人に仕事を回すためには、私自身に自然と依頼が来るだけの仕事量では足りなくなっていたので、営業を強化する目的で、営業の坂本さんを迎え入れたのだけど、彼との協業はうまくいかなかった。理由は色々あるけど、私自身が営業をしないと一切仕事を受注出来ないということがわかってきた。それだけ、システム開発やウェブ制作の営業は難しい。その間も、私自身の動き方としては、松本君と松井さんに仕事を依頼するために、新しい案件の上流工程を流すのが仕事になっていた。お客様との折衝を経て、案件の開発要件をまとめて、松本君や松井さんにバトンタッチをするという具合だ。

仕事の内容と言えば、ウェブサイト制作案件の場合は、お客様にヒアリングをさせていただいて、サイトマップとワイヤーフレームを書いて、デザイナーにデザインの指示を出し、上がってきたデザインデータを松本君や松井さんに渡して、大枠の実装指示を出して完成を待つという具合の働き方になっていた。ウェブサイト制作案件の場合はこうだけど、システム開発案件の場合も同じような具合だ。私が対応する内容は、お客様との会話を通して開発要件をまとめていくことが大部分を占めるようになっていた。

正直、技術のことからどんどん遠ざかっていく感じがしたけど、仕事を回していく感じ、流してかなければならない感じに追いかけられていて、技術のことを考える余力など、まったくなくなっていた。上流SEという仕事があるが、上流SEとは、要件定義を行った上で、メンバーに仕事を流すのが主な仕事内容だけど、役割分担的にその部分だけを対応する形になると、技術から遠ざかっていくことがわかった。

2021年の秋には、坂本さんとの営業代行契約も破棄する形となり、コロナの影響による失注が相次ぎ、いよいよ営業で成果を出さないと会社が潰れるという状況まで来ていた。そんな中始めたのが、2021年の10月から始めたビジネスマッチングである。媒体として数社を選定して、ビジネスマッチングでの生活をスタートする形となった。

ビジネスマッチングでの新境地

ビジネスマッチングを始めてみると、毎日毎日案件情報が大量に流れてくることがわかった。それら案件に対して、1件1件見積を作って、提案書を作って、提案を出していく毎日が機械的に続く状態となった。もはや、働き方としては、エンジニアでは一切なく、まさに営業と呼ぶに相応しい働き方になっていたと思う。

3つの媒体を利用して、毎日我武者羅に提案を書きまくった結果、4か月間の営業生活の成果として、合計約2000万円の受注に成功し、2022年の現在も残っている仕事を対応している状態となった。

この結果わかったのは、以下の点だ。

  • 営業効率の良い媒体だけを使うこと
  • ビジネスマッチングを利用してエンドクライアント案件を受注できると利益効率が良いこと
  • 利益効率が良いため、仕事がはけるまでの一定の期間、営業をしなくても良くなること
  • 営業をしなくてもよくなるので、開発の仕事に集中できる時間を多く割くことができること
  • 重ねて家庭の時間も十分に確保できること

営業として4か月間の営業生活を終えることができれば、その後約1年間にわたって開発の仕事を継続的に行うことができるくらいの仕事量を担保できることがわかったので、今後も継続的に特定のビジネスマッチング媒体を利用することにした。

ビジネスマッチングはコストが安い媒体もあるが、コストが安い媒体は、受注率が悪かったりするので、効率よく営業できる媒体に絞って利用した方が良いこともわかってきた。ただ、そういった媒体はコストが高い。なので、長期契約をすることにより、コスト削減の工夫を凝らすことにした。これでコストを抑えて、効率的に営業ができる媒体を選定し、長期的に利用することができる。

松本君が退職した今、エンジニアとして再出発

松本君を採用してから退職するまでの間、本当に多くのメンバーを雇用して、本当に多くの仕事をメンバーに依頼してきたと思う。実際にメンバーに仕事を依頼することでマネジメントのスキルは多少向上したと思うけど、失うものも多くあったと思う。

年間の行動目標

でも、松本君が退職した現在に在っては、メンバー数も私以外には、エンジニアの松井さん(1人月)とデザイナーの熊本さん(0.5人月)の2名だけなので、営業しなければならない仕事量がかなり少なくて済む。実際には、以下のような目標を立ててみた。

  • 目標年間受注金額:2000万円
  • 時給5000円×4000時間=2.5人×8時間×200日
  • 営業:1日3時間×4か月(120日)=360時間=45日
  • 年間休日:120日
  • 予算計画:
    • 給与800万円
    • 外注費800万円
    • 営業費100万円
    • 共通経費200万円
    • 利益100万円
  • 1日の時間配分:
    • 仕事8時間
    • 自主制作&情報発信3時間
    • 家事育児3時間
    • 睡眠8時間
    • 自由時間2時間

報酬金額としては、結構多めにもらえつつ、フリーランス的な時間の自由さもあり、営業としての経験も積めるし、技術者としての経験も積める、自主制作と情報発信もできる。

技術者としてシステム開発の案件を自分でやっているからこそできる、情報発信があると思っているので、今後は技術者としての情報発信も勢力的に行っていく予定だ。

自主制作の内容

上記のプランでは、必要以上に売上を作りに行くことはしない。時間があれば、自主制作のアプリを作る予定だ。自主制作のアプリは「人材採用支援」のためのアプリを考えており、自社の事業再構築補助金案件として、2023年度に実施予定だ。今回ばかりは、自社完結せずに、本腰を入れて他社とのアライアンスも含めて事業を検討している。うまくいくかどうかは祈るばかりなのだが、ダメならダメで開発に専念するだけである。

今後チームを拡大することはもうない

今後チームを拡大することはもうないと思う。自分のチームを持つことにより、失われるものが多くあることを知った今、チームを保有することのメリットよりもデメリットの方が大きいと考えるようになったからだ。

それよりも、自分自身の技術力と時間を有効に使って、世の中にないものを創り出していったり、地方企業のためにできることをやっていきたいと考えている。

もうマネジャーとして迷走することもないと思うので、良い経験として、3年間だけの悪夢として、この経験は終わらせるつもりだ。

これから、技術者として再出発するので、また独立当初のように仕事を振っていただけるととても嬉しいです。

独立当初の時と違うのは、経験値が上がって、WordPressの実績しかない状態から、アプリ開発の実績をかなり積み重ねたところかもしれません。独立当初を比べると単価も上がっていますが、仕事のパフォーマンスも上がっているので、ご検討をいただけると嬉しいです。