システム開発エンジニアのすゝめ – ウェブ制作中心から業務システム開発中心へ

ウェブ制作から始めたフリーランス生活

私自身、2017年7月に独立した時点では、直近の経歴がウェブ制作会社でのマークアップエンジニアとしてのキャリアだったため、独立後すぐにタイミングではウェブサイトのコーディングやWordPressの構築などをメインで受託して生活をしていた。

その当時は、自分自身で仕事を得る術を持っていなかったため、知り合いのデザイナーさんから仕事を投げてもらっていたけれど、私自身のウェブ制作の低いスキルではなかなか満足のいくような報酬額を得ることができていなかった。

2~3年が経過してある程度フリーランスのコーダーとしても板についてきたころ、初めて補助金を使ったウェブシステム開発の仕事に対応をしたが、システム開発案件の報酬金額の大きさに驚いた。ウェブ制作の仕事をウェブ制作会社から下請けで受託する場合には、数万円から金額が大きくても50万円程度までの規模感になる場合が多いけど、ウェブ制作の下請けの仕事は金額的な限界がその時既に見え始めていた。

実際に自分でウェブ制作の案件を営業するようになってみてわかったのだけど、自分の営業力で営業した場合には、どれだけ単価良く営業できたとしても、時間単価5000円程度が限度だった。私が過去に勤めていた制作会社では、時間単価6000円でお客様へ見積を作って送っていたのを覚えているし、名古屋のウェブ制作会社に単価を聞いたら、5000~6000円くらいの単価感で見積を作っていると教えてもらったこともある。一部の制作会社では、時間単価8000円でお客様に提出をして提案を通すことができているという事例も聞いたことがあるが、それはほんの一握りの制作会社だけが実現できる魔法の単価であるということを、営業の難しさから身をもって知ることになった。

単価感の違い

ウェブ制作の単価感

制作会社の平均単価を6000円と定義した場合に、その金額をベースに下請けに投げる場合の限界単価は2/3である4000円程度が限度だというのが、地方の制作会社の下請けの仕事をしていた自分の肌感だ。

4000円でも少し高すぎるくらいなので、フリーランスが制作会社から下請けの制作を受託する場合の平均的な単価感は3500円くらいが安定していると感じているし、多くのフリーランスの方々がそのくらいの単価感で制作会社から仕事を得ていることは何となく調査していてわかってきた。もちろん、一部の優秀な方は時間単価5000円以上の単価感で報酬を得ている方も確認できているけど、その単価感を得るためには、一定層以上の顧客規模を持つクライアントへの営業を中心とした制作会社の下請けに入る必要があり、多くの中小企業を相手にしている制作会社の下請けに入るだけでは、時間単価5000円という金額は夢のまた夢だということが何となく理解できてきていた。

自分で営業して、お客様への提案活動から対応すれば、単価は6000円程度を担保できる可能性があるが、それも提案次第なので、簡単に6000円の提案を通すことはできなかった。多くのウェブ制作案件に提案を続けたが、時間単価を希望通りに通そうとすると、幾度と知れず失注を重ねる経験をした。その難易度を加味した上で、技術に特化して、制作者として生きていく道を選ぶのであれば、制作会社の下請けの仕事を受託するのが正攻法だ。その場合の単価は、3500~4000円がボーダーラインだと感じている。案件量を確保するためにも、受注の安定感が必要だとすれば、その金額はやはり時給4000円が限度だ。

つまり、ウェブ制作で技術者として制作者として生きていくための平均単価は、時給3500~4000円ということだ。

業務システム開発の単価感

私は、ウェブ制作会社でも働いたことはあるけど、システム会社でも働いたことがあったので、システム開発プロセスというものへの理解は前々から持っていた。その開発に関する経験と知識・技術を生かして、システム開発の仕事に挑戦すると単価を改善できないかと考えることがあり、実際にウェブ制作中心からシステム開発中心へと業務の中心をシフトしてきた。

システム開発というのはウェブ制作とは異なり、多くは大手企業をクライアントとする常駐案件などのSESが中心だ。SESの単価は仕事内容にもよるけど、テックリードなどメンバーの技術マネジメントやコードレビュー、技術戦略立案などを含めた業務内容になってくると、多くの場合に時給5000円以上という単価を目指せることがわかった。

実際に、私は2022年11月から時間単価5000円(人月80万円)という単価でSESに参画をしているので、時間単価5000円という金額は、決して無理のない金額だったのだということが証明できた。

まぁ、私は技術者経験15年目なので、通常の開発オペレーションはほとんどのことを経験してきているし、開発に関することは、概ね何でもできてしまうので、使う側からすると便利屋として使ってもらえるんだと思う。基本的な課題解決力を備えていて、業務上の問題解決をしながら業務に向かうことができるスキル感を備えてさえいれば、時間単価5000円は普通に稼げる。

ウェブ制作では、時間単価4000円が限度だったところを、システム開発では時間単価5000円が実現できた。更には、時間単価5000円という金額を商流的に見ると、エンドユーザー→元請(大手本体)→2次請(大手子会社)→3次請(中小協力会社)→4次請(自社)という形なので、それだけ中間マージンを抜く会社が介在していても、時間単価5000円が実現できるという懐の深さを垣間見ることができた。

ウェブ制作の場合の商流は、エンドユーザー→元請(制作会社)→2次請(自社)という形なので、2次請けであっても限界単価が4000円と中々厳しいものがある。

クライアントの特性が、システム開発の場合は超大手の場合も多いことから、扱っている案件の金額が億を超えることも少なくないようだが、中小企業をお客様とするウェブ制作の場合には、100万円を超えることがそこまで多くはなく、一般的なコーポレートサイト制作なら100万円以内での制作が一般的だ。ウェブ制作とシステム開発の間には、大きな谷間があるし、業務特性として、両者の違いが明確に出ていると思った。

これらより、総合的に考えた場合に、より大きな売上を安定的に稼ぐためには、ウェブ制作の仕事を続けるよりも、システム開発の仕事にシフトしていった方が、安定的に大きな金額を維持できると考えたが、それは結果的に間違いではなかったと思っている。実際に自社も2019年頃まではウェブ制作が中心だったけど、2020年に入ってからはシステム開発を中心に徐々に移行しながらウェブ制作も平行して対応してきたが、2023年に入ってほとんどがシステム開発という状況になった。

技術の違い

ウェブ制作とシステム開発は、技術的にも違いがある。採用している技術については、会社によるところが大きいのだけど、私の周囲では、業務系システム開発はJavaとTypeScriptを利用することが多い。ウェブ制作では、PHPとjavaScriptを利用することが多い。フレームワークは、業務系システム開発では、サーバーサイドはSpringBoot、フロントサイドはReactだ。ウェブ制作では、WordPressを利用することが圧倒的に多い。

またプログラミング言語などだけではなく、ソフト面のスキルとして、ウェブ制作でのコーダー経験があれば、ウェブフロントエンドのベーススキルの1つであるUIデザインへの素養を身につけることができているはずなので、その点でかなりアドバンテージがあると言える。総じて、業務システム開発に特化しているエンジニアはフロントエンドの開発技術が苦手なことが多いため活躍できる可能性が高い。

業務系システム開発技術の土台作り

業務系システム開発の方面を目指すに当たっての技術知識的な土台作りの部分については、以下の2つに取り組むことが安定的に知識習得ができるため、自分自身での個人開発やハンズオン演習を組み合わせることで、技術的な経験値をプラスすれば、そのまま現場に入ることができるようになると思う。なので、以下の資格を学ぶことをお勧めする。

  • 情報処理技術者試験
  • AWS認定試験

情報処理技術者試験は、基本情報技術者から応用情報技術者まで到達するのは必須だと思う。それより後ろに関しては、私も取得していないので、実際にはあった方が良いのだろうけど、なくても何とかなってはいる。

AWS認定に関しては、情報処理技術者試験の知識を土台として、AWSの活用に関する基礎的な知識を学ぶことができる。AWSに関する基礎的な知識というのは、情報処理技術者試験のレベルからすると、多少応用的な内容を含むため、最低限基本情報技術者を学んでから取り組むと良いと思う。

AWS認定試験を学ぶ順番は、クラウドプラクティショナーを最初に学ぶことで前提を知ることができる。その後アソシエイトの3資格を勉強する。その後、専門知識の各試験を一通り学んでいく。最後にプロフェッショナルレベルの資格を学ぶことで、AWSに関する基本的な内容全体を押さえることに繋がる。AWS認定試験の内容を押さえておくことによって、インフラの知識と合わせて、AWSを前提とするアプリケーション開発の知識も得ることができる。

後はハンズオンや個人開発で実際に、何を作るかを自分の頭で考えた上で、実際に設計して実装してみることが大事だ。その経験を経ることで、具体的に自分自身でシステムを構成して創り上げる能力を磨くことができる。ある程度の経験ができてきたら、そのまま低単価で良いので現場に入れるようにフリーランスエージェントを使えば良いと思う。単価的に50万円前後の単価でプロジェクトに入れる案件もあるので、エージェントに属しながらそれらの案件を狙っていけば良い。

プログラミング言語についても学ぶ必要があるので、どんな仕事がしたいかで言語を選ぶと良い。ウェブ制作との相性が最も良いのがPHPだし、SaaSプロダクトの開発にはRubyが人気がある。機械学習ならPythonが良いだろうし、業務系ならJavaやC#が中心的な技術になると思う。

言語と合わせて、フレームワークについても学んでおくとスムーズに業務に入っていける。ウェブアプリケーションフレームワークの基本はサーバーサイドならMVCフレームワークが基本になるし、フロントサイドならReactなどのリアクティブなビューフレームワークを学んでおくと良い。

どの言語やフレームワークに勢いがあるかは、Googleトレンドで自分で調査をした上で、実際のエージェントでの求人を確認して、世の中に求められている技術を把握しておくと良い。

業務システム開発の方向性も模索してみよう

ウェブ制作よりも業務システム開発の方が、報酬額的に優れているのでお勧めだという話を今日は書いた。だけど、ウェブ制作が好きでやっているという方も多いと思うので無理に業務システム開発を目指す必要はない。目指す必要はないけど、単価感的に業務システム開発とウェブ制作との間には大きな谷間が合って、その間を埋めることはできないということは知る必要がある。その上で、自分がウェブ制作をやりたいのか、業務システム開発をやりたいのかを考えれば良いと思う。

私自身は、業務システム開発の仕事も、ウェブ制作の仕事も両方やってきて、どちらも嫌いではないけど、稼ぐに当たっての時間効率が良い業務システム開発の仕事を選ぶことで、時間を創り出して、その時間を読書をしたり家族サービスをしたり、将来への投資としての個人開発に充てたりと、有意義な時間を過ごせるようにしていくことにした。依頼を請けられれば、ウェブ制作もやらないことはないけど、今後は意図的にウェブ制作の仕事を受託しにはいかないつもりだ。

私自身、システム開発者としても板についてきているのもあって、大手のSI企業でのSESでは「継続的にお願いしますね」という言葉を十分に引き出せる程度には満足していただけるような業務遂行ができていると自負している。ウェブ制作と業務システム開発の仕事は全然中身が違うので人によって向き不向きがあると思うけど、業務システム開発の仕事が向いている方にとっては、時間単価的にも仕事の内容的にも、総合的に楽しいと思える仕事であると思える。

あなたも、是非一度、業務システム開発の世界に足を踏み入れてみてはどうだろうか。ウェブ制作の世界にはない良さや雰囲気がこの世界にはあるので、是非一度こちらの世界にも足を踏み入れてみてほしい。それに、システム開発や情報処理の勉強は楽しい。プログラミングが好きな方であれば、時間を忘れて学習に努力できると思うので、技術研鑽を重ねながら、報酬的に伸びしろのある業務システム開発業界を検討いただければと思う。

(補足)ウェブ制作にも良さがあるのでよく考えて判断しよう

ウェブ制作の業界も能力のある人間にとっては良い単価を得ることは可能です。大手の制作会社に所属して、バリバリ大手向けのサイト制作を継続できるだけの技術力と体力があれば、ウェブ制作でも稼ぐことは可能です。

だけど、コーダーという立ち位置は、ウェブ制作業界にとっては、仕事を請ける側に回る職種なので、ディレクターやデザイナーといった上流に位置する職種の方の裁量に振り回されてしまうリスクが高いポジションなので、貧乏くじを引くことも多いと思います。

業務システム開発の業界に入れば、エンジニアが主役なので扱いも少し変わるかなと感じますね。ウェブ制作のコーダーと業務システム開発のエンジニアの違いは大きく、どちらが良いとは一概には言えませんが、私には業務システム開発が合っていたというだけの話です。

IT業界は広いので、自分自身にとって、最適なエンジニア生活を送れるような業務環境を見つけるための努力を惜しまずに継続すれば、必ずより良い状態を得ることに繋がると思います。諦めずに学び挑戦し続けましょう。